「介護の仕事をしているけど、認知症の人の気持ちがわからない」
「認知症の方の介護がとにかく大変・・・」
今回は、そんな悩みをお持ちの方に向けて、認知症の人がどんな気持ちでいるのか解説していきたいと思います。
介護の仕事の現場では認知症の人の気持ちは見過ごされる傾向に
介護の仕事をしていると、認知症の方に遭遇する機会は多いため、「○○さんは何回も同じ話を聞いてくる」「トイレが近くて大変」など、認知症の方特有の症状に関する悩みは多いかと思います。
そのため、仕事をする上での対策を練ったり、情報を共有する事は多いのですが、認知症の人がどんな気持ちでそのような行動をしたのかなど、「認知症の人の気持ち」についての話は意外と会話の中には出てきません。
介護の現場では利用者さんの気持ちに寄り添った声掛けや介助、その他サービスをしなければいけないのに、認知症の利用者さんがどんな気持ちでいるのか会話に出てこないということは、今現在行っているサービスで本当に利用者さんが満足しているのか、サービスが適切なのか判断基準が曖昧になってしまうという問題点があります。
認知症の人への介護士の考え方
愚痴は少しもプラスにならない
介護の現場に必ず一人はいる愚痴しか言わない介護士。
「あ〜またオムツいじりした〜。。。あの人、ホントにイライラするよね〜」とか、「全然言うこと聞かないから疲れる」とか言ってしまう介護士の事です。
気持ちはわかります。すごくわかりますよ。
介護の仕事は大変ですし、決して甘くはないので、たまには愚痴の一つや二つくらい出る時もあるでしょう。
ですが、毎日のように愚痴ばかり言ってるような人は、認知症の人の気持ちを全く理解しようとしていないように思えます。
認知症の人の気持ちを理解してかみ砕けないまま日々を過ごしていると、ストレスから虐待へと繋がってしまう危険性もあります。
認知症の人の辛い気持ちを理解しよう
認知症の人って、物忘れはするし、妄想もあるし、日付や場所がわからなくなったり、失禁してしまったりすることも日常的にありますが、何も考えないで毎日を過ごしているわけではありません。
認知症の人は日々戦っているんです。それは、日々変わりゆく自分に対する不安や恐怖とです。誰も認知症になりたくてなる訳ではありません。
その不安や恐怖は自分で何かがおかしいと自覚する、もしくは家族や周りの人が何かがおかしいと気づいてから始まるわけですから、施設に来る前から戦っている事になる訳です。
その間には家族や近隣の人とのトラブルがあったり、家族に冷たくされ孤独を味わう人もいるでしょう。
なにかおかしいと思っているものの、病院に行って認知症と言われてしまったらこの先どうしようと思うとなかなか病院に行く勇気も出ず、かと言ってどうしたら良いのか誰に相談して良いのかもわからず、一人で毎日辛い日々を送るケースも多々あります。
その辛さは、認知症ではない周りの人にはなかなか想像できないでしょう。なので、認知症の人に「あなたに何がわかるの!」なんて言われたら正直、言葉に詰まります。
認知症の人の立場に立って考えてみよう
認知症の知識がある程度あれば自分が老後に認知症になったらどうしようと言う想像は出来ると思います。
では、これから簡単な例を出すので、あなたも少し認知症になった自分を想像してみて下さい。
ある日財布が見つからずいつも置いてあるはずのタンスを探しました。ですが、どうしても見つからず家族に聞いてみると、「テーブルの上にあるよ」と言われ、なんだこんな所に置いていたのか、しっかりしなきゃなと思いながらもホッとしました。
次の日。
また財布が見つかりません。いつも財布を置いてあるはずのタンスを探しました。ですがどうしても見つからず、家族に聞いてみると
「また財布?昨日タンスだとなくした時に探すのが大変だから部屋のテレビの横に置いておくって言ったじゃない」
テレビの横を見てみると確かに財布はそこに置いてあってホッとしましたが、テレビの横に置いておくなんて言った覚えはありません。自分でも疲れているのか何なのか、どうしたんだろうと不安に思い始めました。
更に次の日。
財布が見つからず、いつも置いているはずのタンスを探しましたが財布が見つかりません。どこに置いたのだろうと思い部屋中探してみましたが、途中でふと思いました。
「あれ?今何を探してたんだっけ?思い出せない。。。」
どうでしょうか、上手くイメージできたでしょうか?
自分がそうなったらと考えると不安や焦り、恐怖感などが湧いてきませんか?全員同じとは言い切れませんが、認知症の人は毎日そのような気持ちで様々な物事を忘れていく自分や、感情を抑えられなくなっていく自分と戦っているんです。
認知症の人の気持ちが理解できたら
ちなみに先ほどの例は、あまりにも愚痴や文句しか言わない介護員がいたので、どうにか気持ちを切り替えてもっと利用者の気持ちを考えれるようになってくれないだろうかと、実際に私が紙に書いて、「自分がこのような状況になったらどういう気持ちになりますか?」と考えてもらった例です。
すると、その愚痴しか言わない介護員はしばらく考えた後に、「すごく怖いです」と一言。その後、完全に仕事に対する態度が改善されたというわけではありませんが、愚痴を言いつつも
「でも、もしかしたら○○さんはこんな風に考えていたのかな」
などの発言が聞かれるようになり、その介護員に対する利用者さんからの評判も徐々に良い方に変わっていきました。
オムツ交換が早くて丁寧だろうと、重い利用者さんの移乗介助がスムーズにできようと、認知症の人の気持ちを理解できないようでは介護士として一人前どころか半人前とも言えないのではないでしょうか。
介護の仕事をするなら知っておきたい認知症の人の気持ちまとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事の要点をまとめてみたいと思います。
- 介護の仕事を始めたばかりだと認知症の人にイライラするケースがある
- 認知症への理解が深まらないとストレスから虐待へと繋がってしまう恐れがある
- 認知症の人も認知症になりたくてなったわけではない
- 自分が認知症になった場合をリアルに想像してみるとよい
- 仕事が早いことよりも利用者さんの気持ちを理解できることが大切
いかがだったでしょうか。
利用者さんに寄り添う介護とは、まずは認知症の利用者さんの気持ちを理解することから始まります。
もちろん、一人ひとり症状や性格も違いますので、今回書いてきた以外の悩みや不安を抱えている利用者さんもいることでしょう。
どのような問題に直面しても、頭ごなしに怒ったりせず、まずは話を聞いてみるということを忘れないでください。