食事介助は、排泄介助や入浴介助と比べると簡単に思えるかもしれません。
特に、お子さんをお持ちの方は「子供にご飯を食べさせてたし大丈夫!」と思われる方も多いでしょう。
ですが、高齢者の人、ましてや認知症や様々な障害のある人に対するご飯の食べさせ方は当たり前ですが全く違います。
そこで今回は、これから介護の仕事を始めたい方や働き始めたばかりの方に向けて、介護施設のスタッフが押さえておきたい現場で役立つ食事介助の基本やコツについてまとめてみました。
まずは高齢者の食生活について知ろう
食事介助と言ってもまずはそれ以前に、高齢者はどんな食生活なのか、どんな食事を好むのか理解しておかなければいけません。
高齢になるにつれて食生活には様々な変化が起こります。
濃い味付けが好きになる
味覚が衰えて、しょっぱさや甘さを感じにくくなるため、自然と濃い味付けが好きになってきます。
むせこみやすくなる
年齢を重ねることで飲み込む力、つまり嚥下機能(えんげきのう)が低下して、食べ物や飲み物を上手く飲み込むことが出来ずむせこみやすくなります。
乾燥した物は飲み込みにくくなる
年齢を重ねると、唾液の分泌量が減ってきます。
そうなると、パンやビスケット、薄皮の饅頭など、口の中にくっついたりパサパサしたものは飲み込みにくくなり、むせこみやすくなります
固いものは食べられない
これは何となくイメージできるかもしれませんね。
高齢者は歯や顎の力が弱くなり、咀嚼(そしゃく)する力(食べ物を噛む力)が若い頃より三分の一〜四分の一になると言われています。
そのため、自然と柔らかく噛みやすい食べ物を好むようになります。
食欲があまりわかなくなる
味覚、嗅覚、視覚などが衰えることによって食欲があまりわかなくなります。
若い人に比べて運動量が少ないのも要因の一つかもしれません。
便秘や胃もたれしやすくなる
高齢者は胃粘液の分泌量の減少し、腸の運動能力が低下します。
そのため、食べ物を消化する機能が衰え、胃もたれや便秘が起こりやすくなります。
ここまで見てどうでしょうか?
若い人とはだいぶ違う事がわかるかと思います。
介護スタッフが押さえておきたい食事介助のコツ
ここから食事介助のコツについて解説していきたいと思います。
正しい姿勢で座れているのかチェックしよう!
「ちゃんと座って食べなさい!」なんて子供の頃に親に怒られた記憶はないですか?
それは本当にその通りで、利用者さんがしっかりとした姿勢で座っていないと誤嚥(ごえん)のリスクは一気に跳ね上がります。
テーブルとイス(車いす)で食事する場合
- 足をしっかりと床につける
- 車いすの場合はフットレスから足をおろし床にしっかりと足をつける
- やや前傾姿勢にする(顎が上がっていると上手く飲み込めず誤嚥の危険性がある)
- イスの高さは膝が90度に曲がる高さ
- テーブルの高さは肘が90度に曲がる高さが望ましい
- 座位保持(ざいほじ)が上手くできない場合はイスから落ちないようにクッションを使用してバランスをとるのも効果的
ベッドで食事をする場合
- 利用者の寝位置を利用者の体格や希望に合わせて適切な位置にする
- ベッドの角度は45度〜80度にギャッチアップ(ベッドの背もたれを上げる事)する
- 膝を軽く曲げ、その下にクッションを入れる
- 腰はベットに沿うようにし、隙間が無いようにする
- 後頭部にクッションを入れ首を安定させる
リクライニング車いすで食事する場合
- リクライニングの角度を45度〜80度に起こす
- 膝を90度に曲げる
- 足をしっかりとステップにつけるあたま
- 体が安定しない場合は頭や体の後ろにクッションを入れる
食べさせる時のチェックポイント!
座っている姿勢を整えたら、食事開始です。
利用者さんの身体状況によって、介助法は様々ですが、食事介助の基本さえ覚えていれば、その時々で応用出来るので、まずは食事介助の基本をしっかりとマスターしましょう。
利用者さんの横に座り、目線は同じ高さにする
横に座ると言っても、正確に言えば斜め前に座ると言ったほうが正しいでしょう。
真横に座ってしまうと利用者さんの首にかなり負担がかかることになりますからね。
それと目線は必ず同じ高さにしましょう。
忙しさを言い訳にして立ったまま食事介助をしてしまうと、利用者さんの顎が上に上がってしまい誤嚥のリスクが高まります。
まずは水分補給
お茶などでまずは口の中を潤しましょう。
そうすることによってその後の食べ物の飲み込みがスムーズになります
少量をスプーンに盛り、温度に気を付け、必ず下から口に運び、奥まで入れない
高齢者は若い人のようにもりもり食べることは出来ません。なので一口はティースプーン一杯くらいの量が望ましいでしょう。
それと温度に気を付けることも忘れないでください、温度をチェックし忘れると当たり前ですがやけどの恐れがあります。
そして、なぜ下から口に運ぶのかと言うと、上から運んでしまうと顎が上がってしまうからです。
大事なことなので何度も言いますが、顎が上がったまま食事をすると高齢者だけでなく、誰でも誤嚥のリスクが高まるので必ず下から口に運ぶようにしましょう。
あと、スプーンは絶対口の奥に入れないことです。
スプーンを奥まで入れると吐き気を誘発する恐れがあります。
飲み込みをしっかりと確認する
これは非常に大事です。
飲み込んだのを確認しないままグイグイ口の中に食べ物を入れると当たり前ですが誤嚥のリスクが高まります
飲み込みの確認は口の動きだけでなく、のどの動きをよく見て確認しましょう。
麻痺がある利用者さんは麻痺側に食べ物が溜まりやすい傾向があるので注意して見る必要があります。
食事を急かさない
食事介助をさっさと終わらせて、口腔ケアなどの次の仕事に早く行きたい気持ちもわかりますが、高齢者はご飯を早く食べる事は出来ません。
食事を急かすことで誤嚥の危険性が高まるので、急かすことは絶対にしないで下さい。
食事の摂取量を記録に書く
食事量と水分の摂取量は利用者さんの大事な情報です。
忘れずに必ず記録に書きましょう。
口腔ケアも忘れずに
食事が終わったら口腔ケア、つまり歯磨きも忘れてはいけません。
口の中に食べ物が残っているまま寝たりしてしまうと、それによる誤嚥の危険性も高まります。
食後は、丁寧に口腔ケアをしましょう。
介護の現場で役立つ食事介助のコツまとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
では最後におさらいもかねてここまでの要点をまとめていきたいと思います。
高齢者の食生活
- 濃い味付けが好きになる
- むせこみやすくなる
- 乾燥した物は飲み込みにくくなる
- 固いものは食べれない
- 食欲があまりわかなくなる
- 便秘や胃もたれしやすくなる
正しい姿勢で座れているのか
- テーブルとイス(車いす)で食事する場合
・足をしっかりと床につける
・車いすの場合はフットレスから足をおろし床にしっかりと足をつける
・やや前傾姿勢にする(顎が上がっていると上手く飲み込めず誤嚥の危険性がある)
・イスの高さは膝が90度に曲がる高さ
・テーブルの高さは肘が90度に曲がる高さが望ましい
・座位保持(ざいほじ)が上手くできない場合はイスから落ちないようにクッションを使用してバランスをとるのも効果的 - ベッドで食事をする場合
・利用者の寝位置を利用者の体格や希望に合わせて適切な位置にする
・ベッドの角度は45度〜80度にギャッチアップ(ベッドの背もたれを上げる事)する
・膝を軽く曲げ、その下にクッションを入れる
・腰はベットに沿うようにし、隙間が無いようにする
・後頭部にクッションを入れ首を安定させる - リクライニング車いすで食事する場合
・リクライニングの角度を45度〜80度に起こす
・膝を90度に曲げる
・足をしっかりとステップにつけるあたま
・体が安定しない場合は頭や体の後ろにクッションを入れる - 食べさせる時のチェックポイント
・利用者さんの横に座り、目線は同じ高さにする
・まずは水分補給
・少量をスプーンに盛り、温度に気を付け、必ず下から口に運び、奥まで入れない
・飲み込みをしっかりと確認する
・食事を急かさない
・食事の摂取量を記録に書く
・口腔ケアも忘れずに
いかがだったでしょうか。
食事介助は介護の仕事の中でもメインの仕事内容であり、一歩間違うと死亡事故にも繋がる事もある大変な仕事です。
決して手を抜くことなく、利用者さんに目配り気配りしましょう。