介護職員として経験のなかった人が、まったく別の業種から飛び込んで来られるということは珍しくありません。
例えば、私のようなIT関連の仕事や製造業などについていた人が、
「人と関わる仕事がしたい」
「自分自身が役に立ったという実感ができる仕事がしたい」
と思い立って、介護職員を目指す人も多いです。
介護職員は職種によっては無資格・未経験でも就業が可能ですし、ハローワークで開催されている介護職員初任者研修を終了して有資格者として就業される方もいらっしゃいます。
まったくの未経験から漠然とした不安を抱えたまま働き始めて、自分が思い描いていた介護職員とのギャップを感じる人もかなり多いようです。
今回は介護職未経験の人がどのような不安を抱えていて、働き始めてどのようなギャップを感じているのか、またどのように対処すれば良いかお伝えしていきます。
不安1.自分に介護職が務まるだろうか
介護職を始めてみようと考える人のなかで圧倒的に多い不安は「自分に介護職が務まるだろうか」ということです。これはいろいろな思いが詰め込まれている表現で、個人個人でどのような思いを持っているかは異なってきます。
例えば40歳を超えているような場合で、若い介護職員のなかで自分自身が業務についていけるかというもの。たしかに一般企業での転職事情を考えてみると、40歳からの未経験者はなかなか思うように仕事が見つからないといわれます。
介護職員の募集を見てみると、年齢制限がまったくないという求人もたくさんありますし、このような状況にありがたみを感じる人も少なくないでしょう。
厚生労働省が発表している資料によりますと、就業している年齢層は男性介護労働者では40歳未満の人が約54%となっており、逆にいえば40歳以上では約46%となっています。
女性においては、最も多い年齢層が40代・50代となっています。
職種別にみてみれば、施設やデイサービスの職員では30代、40代が最も多く、訪問介護員ではなんと60歳以上が最も多くなっているのです。
この中にはベテランと呼ばれている人も含まれているのですが、どの事業所でも経験3年未満の人ばかりですから、未経験がハンデになるということはありません。
もちろん介護の仕事は、身体の不自由なお年寄りに対して、必要な援助を行うという業務ですから覚えなければならないことはたくさんありますし、大変な業務であるということは間違いありません。
不安2.給料
新聞やテレビなどの報道を見ていると、
「介護職員は給料が低い」
「全産業の給料と比べると数万円低い」
などと言われることが多くあります。
確かにハローワークや新聞広告などを見てみると、お世辞でも高い給料と言えない介護サービスをたくさん見つけることができます。
だからといって
「やっぱり介護職員の給料は低い」
「今後も給料は良くならない」
と決めつけるには早いといえるでしょう。
というのも介護職員は、キャリアアップの道筋がきちんと整えられているからです。
厚生労働省の資料をみれば分かるのですが、介護人材のキャリアパス全体像がしっかりと示されています。
介護職未経験や無資格の人でも経験を積むなかで、さまざまな研修制度や養成カリキュラムを受講すると、国家資格である介護福祉士を取得できます。
さらにチームリーダーに必要な研修プログラムを受ければ、高度な知識や技術を有する専門職や管理職や施設長といったマネジメント職に就くことが想定されているのです。
実際、多くの施設や事業所では、一介護職員からリーダーや施設長になった人や独立して介護サービス事業所を立ち上げた方がたくさんいらっしゃいます。
経験を積むなかで、相談員になることもできますし、介護支援専門員資格を取得してケアマネジャーになる人も少なくありません。
ケアマネジャーであれば、経験を積んでいけば主任介護支援専門員の資格を取得することもでき、年収で一般サラリーマンよりも多く稼いでいる人も多いのです。
つまり、自分自身がキャリアアップする意志を持っていれば、どこまでもスキルアップすることができ、キャリアを高めることが可能なのです。
不安3.体力
これもテレビや新聞などのメディアで取り上げられることですが、介護職員は肉体労働であり、体力に自信がないとできないというものです。
特に施設介護職員であれば、夜勤もあり職員不足もあるために、かなり業務がハードといわれています。確かにこれは未経験者が、初めて介護業務を行ってみて実感することであるのは間違いありません。
介護職の仕事内容は、
「お年寄りの笑顔に囲まれて行う仕事」
「お年寄りに感謝されながら行う仕事」
であると理解されています。
決して間違いではないのですが、業務量があまりに多く、お年寄りにゆっくりと寄り添っている時間など取れないということに気がつきます。そこで理想と現実のギャップに苦しんで、離職するという人は少なくありません。
ただし、これは自分自身の仕事の取り組み方を意識するだけで回避できるものです。介護職未経験であれば、必ず先輩職員から説明を受けながら介護業務を覚えていきます。
しかし、最初の間は何のことだか分からないことも多く、また覚えなければならない業務もかなり多くありますから、メモを取っていたとしても訳が分からなくなってしまいます。あとからメモを見返しても、どこに書いたのか見つからないほど、メモの内容が多くなることでしょう。
介護業務は1か月サイクルや1週間サイクル、1日ごとなど、定期的な業務がたくさんあります。メモを取るのであれば、時間ごと、曜日ごとなどで区別してメモをしておけば、あとから「前日のこの時間に行った業務」「先週の木曜日に行った業務」など見返すことができます。
夜勤に入るようになれば、休憩時間には休憩をしっかりと取るようにしましょう。最初のうちはメモを見ながら業務を行うことになり余裕がないかもしれませんが、仮眠時間など与えられた休憩時間にはしっかりと休んでおくことで体力を温存することができます。
長い夜勤ですから、常に緊張状態にしておくと、それこそ体力に限界が生じて離職してしまうはめになってしまいます。
不安4.介護技術や知識
介護未経験者が介護職となる際に、介護技術や知識のなさを不安に感じる人が少なくありません。
そのため前職を退職する際に、介護職員初任者研修や介護職員実務者研修といった研修を修了して資格を取得される人が多くおられます。
しかしこれらの研修を修了したからといって、即戦力として通用するわけではありません。実際に介護現場での業務においては、あまりの技術や知識不足に悩んでしまうことが多いです。
研修時において介護の実技を行いますが、人形相手や受講生同士で介護の練習を行うことがほとんどです。しかも何回か練習すると、それで終了となってしまいます。それでは現場ですぐに技術を活用することはできません。
介護未経験者はオムツ交換ができるかどうか不安に感じている人が多いのですが、介護はオムツ交換だけではありません。寝返り、起き上がり、立ち上がり、トイレ、入浴、食事などさまざまな場面での身体介護があります。その時々に応じた介護実践行う必要があります。
また認知症ケアはかなり高度な知識を要します。認知症の原因についてしっかりと理解し、原因に応じた介護を行わないと認知症が進行してしまう可能性があります。
このようなギャップを埋めていくには、介護職員になってからも新しい技術や知識をどんどん吸収していかねばなりません。
働き始めて感じるギャップを埋めるために
理想と現実のギャップを感じてしまうことはある程度仕方がないといえます。ただしその穴埋めをすることは可能です。もしも今から介護職への転職活動を行うという人であれば、「研修制度が充実している事業所」を選ぶようにしてください。
研修制度が充実しているというのは一見大変そうにも思いますが、スタッフの育成を第一に考えているとてもいい事業所が多いのです。そのような事業所では自分自身がどんどんスキルアップやキャリアアップすることが可能です。
介護の質も高く良いサービスを提供するために、スタッフ同士の連携も密であることが多いですから、人間関係も良好であることが多いのです。そのような職場環境ではストレスを抱えるというリスクがとても低いといえます。
また研修制度が充実している事業所では、離職率が低いのが特徴です。いつまでも仲間と共に質の高い介護を提供し、お年寄りに感謝されながら就業することができるでしょう。